先日のNHKニュースで、「総務省が、SIMロック解除の義務化を正式決定し、ルール作りを始める」という報道がありました。
「SIMロック解除」を義務化することで、「携帯の月額料金が安くなる」「端末自体の価格が高くなる」「MVNOのSIMが売れるようになる」などと言われています。
でも、本当にそうなるのでしょうか?
個人的な予測になりますが、記事として書いておきたいと思います。
「SIMロック」の解除について
「SIMロック」とは
既にご存知の方が多いと思いますので、簡単に。
例えば「docomoで購入した携帯電話は、Softbankやauでは利用することができない」ということ。
サービスとして、ではなく、端末自体にそういう技術的なロック(制限)が、意図的に付加されているのです。
「SIMロック」の必要性
-そもそも「SIMロック」は必要なのか。
わざわざ「SIMロック」を端末に仕込んでいるキャリアとしては、自分のところで購入した端末を他のキャリアで使ってほしくない、というわけです。
端末を買い替えることなく、同じ端末を他のキャリアでも使えるなら、より料金の安いところに乗り換えられてしまう。
そのため、「他社より料金を安くすること」が多少なりとも必要になってきます。
そこが、総務省の狙いの1つでもあるわけです。
「SIMロック」を解除するということ
実は、既に「SIMロック」を解除するサービスを行っているキャリアはあります。
ドコモは 2011年4月以降発売のほぼ全機種で、Softbankも 4機種(2014年2月現在)についてSIMロック解除の手続きを受け付けています。(解除手数料が必要)
従来の携帯電話(フィーチャーフォン、所謂ガラケー)では、各社独自のサービス(ドコモであれば i-modeや、imodeメールといったもの)が端末にあらかじめ組み込まれているため、例えばドコモの端末を「SIMロック解除」してSoftbankで利用しても、メールやネットは使えず、通話しか使えないため、利用者にとってもメリットをあまり感じられませんでした。
ところが、最近普及しているスマートフォンでは、メールアプリや他社がリリースしているアプリを後からインストールして利用できるため、「SIMロック解除」のメリットが感じられるようになっています。
「SIMロック解除」で何が変わるか?
「SIMロック解除」を義務化することで、様々なメリットが期待されています。
- 価格競争により、月額料金が下がる
- MVNOのSIMが売れるようになる
同時に、多少のデメリットも発生するとみられています。
- 端末自体の価格が高くなる
- キャッシュバックや割引が無くなる(減少する)
以降、個人的に思うところを書いていきたいと思います。
価格競争が起きて、月額料金が下がる?!
勝手な推測になりますが、料金が安くなることはないのではないかと思います。
今後、一般的な価格競争により料金が安くなることはあるとしても、SIMロック解除が原因となって、大幅な価格変動が起きるとは思えません。
そもそも、
- SIMロック解除をしてまで、他のキャリアに移る人が出てくるのか
- 価格を下げる競争ではなく、サービスによる競争が盛んになるのではないか
と思うのです。
SIMロックを解除してまで、他社に移る人が出てくるのか?
まず、SIMロックを解除してまで他社に移るメリットがあるのか。
現在の販売方法は、端末費用に相当する額を約2年間、毎月の使用料から割り引く実質価格というものが広く採用されています。2年以内にSIMロック解除をして他社に移るとなると、それ以降に受けられるはずの割引が受けられなくなり、端末の残債があれば支払う必要があります。さらに、端末を持ち込んで他社に移ったとしても、端末を購入しないので当然毎月の割引はありません。
他社キャリアに移るのであれば、現状であれば新規に端末を購入した方がはるかにメリットがあります。使用している端末によほどの愛着があるか、どうしても他社の回線でその端末を使いたい、という少数の人にしかメリットは感じられません。
また、キャリアメールという携帯電話会社が提供しているメールサービス(@docomo.ne.jpなど)を利用している人も多く、他社に移る際にメールアドレスの変更を余儀なくされることが足かせとなって、他社への転出を躊躇してしまうことも考えられます。
価格を下げる競争ではなく、サービスによる競争が盛んになるのでは?
つい先日、サービスが開始された音声通話の定額料金。定額サービスを初めに開始したドコモの月額2700円という料金設定に、Softbank/auとも合わせてきました。
通信料金も数年前から各社ほぼ横並びで、値下がりもほとんどしていません。スマートフォンを利用する人が増えて利用者の平均月額が増えているにもかかわらず、相変わらず値下げはされていません。
もちろん、他社が料金改定やキャンペーンを行えば、それに準じたものを出してくるのは今までもあったことですが、今後「SIMロック解除」を義務化したからと言って、それによって値下げが起こるとは考えにくいのではないでしょうか。
また、MVNOという仕組みがある以上、価格を下げる競争はあまり得策ではない気がします。単純に価格だけを重視している人は、MVNOで音声付きのプランを契約すれば良いだけの話です。
今後、サービスやその見せ方によって、他社との差別化を図ってくるのではないかと思われます。
MVNO(格安SIM)を契約する人が増えるんじゃない?
MVNOを契約する人は増えると思います。それは、SIMロック解除に関係ない話。
というのは、ドコモの端末であれば日本通信、IIJmio、BIGLOBEなど、ドコモ回線を利用しているものは「SIMロック」を解除しなくてもそのまま使えます。また、auの端末であれば、最近サービスを開始した mineo(マイネオ)というMVNOが利用できます。
つまり、月額料金の安いMVNOを契約するために「SIMロック解除」を行う必要はほとんどないということです。
そもそも、ドコモ/Softbankとauは通信方式に違いがあるので、au端末のSIMロックを解除してもドコモの通信方式に対応したものでなければ、ドコモ系のMVNOでは利用できません。
MVNOで利用したいということで「SIMロック解除」が必要になるのは、Softbank端末でドコモ系のMVNOを利用するという少数の人に限られます。
結局「SIMロック解除」義務化って何?
ユーザーの選択肢を広げる施策
端末持ち込み契約の場合は割引が無いとか、キャリアメールを使っていて変更が面倒だ、などいろいろな理由から、「SIMロック解除」をしてまで他社に移ろうとする人は少ないのではないかと書きました。
しかし、「SIMロック解除」をして他社に移りたいという人がいるのも事実で、そういう人のために「できないことをできるようにする」という点で、ユーザーの選択肢を広げる施策であると考えられます。
また、海外で現地のSIMカードを調達して安く利用したいというニーズにも対応できるため、そのような人にとっては嬉しい話かもしれません。(そういう人は、既にSIMフリー端末を利用している人も多いと思いますが)
ユーザーの選択肢を広げるという意味では、海外のSIMフリー端末を自由に使えるようになれば良いなと個人的に思っています。(※日本の技適を通過していない端末を国内で利用すると、電波法違反となってしまうので)
キャリアにとっては嬉しくない施策?
これまでドコモは iPhoneを除く、ほぼ全機種に対して「SIMロック解除」を提供してきています。Softbankも 4機種に限って「SIMロック解除」を提供しています。
今回の決定によって、その範囲をiPhoneを含むすべての機種に広げなければならなくなります。
また、auは現時点で「SIMロック解除」を提供していませんし、義務化によって提供することになっても、通信方式の違いからドコモやSoftbankで使えないため、国内においてはユーザーにメリットは無いと思われます。
でも、対応しなければならない。
このようなことを考えると、キャリアにとってはあまり嬉しくない施策であると言えます。
国内メーカーによるグローバル端末
私が個人的に期待しているのは、国内メーカーが海外向けに製品を作るようになるのではないかという点です。
SIMロック解除が義務化されることで、単一のキャリアに特化した端末ではなく、国内で言えばドコモでもSoftbankでもauでも利用できる端末。もっと言えば、海外にある多くのキャリアでも利用できる端末が開発されるようになるのではないかと思っています。
国内メーカーのグローバル市場における競争力が高まることを期待しています。
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